続マセマティック放浪記

47. 三陸の青き浄土に地獄絵図描く仏の御や心如何に

想像を絶するこの異常事態に我々国民はどう対処していくべきなのだろう。遣り場のない深い悲しみと、先行きの見えない不安とで今なおこの国は覆い尽くされてしまっている。東北・関東一円を襲ったマグニチュード9の大地震は巨大津波を誘発し、人々の懸命な営みを嘲笑うかのごとくに太平洋沿岸各地の集落を破壊し尽くした。その猛威によって多数の人命を奪い去り、数知れぬ家屋や施設を瓦礫の山と化したにもかかわらず、それだけではなお暴虐の念が満たされぬとばかりに、福島第一原発の原子炉群を危機的状況に陥れた。蟻にも等しい小さなこの身にできることなど何一つないが、ともかくも被災された方々には心からの哀悼の意を表したい。

想像を絶する各地の凄惨な状況については各種メディアを通じて既に報道がなされている通りだから、ことさら言及するまでもないだろう。問題はこの降って湧いた想定外の国難の数々をどう受け止め、今後それらをどのように克服していくかである。日本の現況に絶望し、意気消沈している暇など我々にはない。ささやかでもよいから一人ひとりが節制に努め、その人なりにできる範囲で被災者救済を心がけ、互いに手を携えながら明日に向かって笑顔で立ち上がるようにするしかない。爛熟した現代文明に浸りきった身をいくらかでも反省しながら、社会的機能や生活必需品の生産体制が回復し政治経済が安定するまでは、少々不自由ではあっても現状に甘んじるしかないだろう。そんな自己抑制の向こうにしか新たな希望は湧いてこないからである。

先月のこと、私は、岩手県の小木浜から宮城県を経て福島県の南相馬に至る被災地の海岸線を細かく訪ね歩き、その惨状を目の当たりにしてきた。その折の深い想いについては、連載コラムを担当している「時流遡航」(医薬経済誌)などであらためて筆を執りたいと考えている。その際に被災地の写真を500枚ほど撮影したのだが、南勢出版からの依頼に応じ、その一端をこのホームページで公開することにした。多くの国民がもう何度も目にした光景ゆえにニュース性はまったくないが、今回の東日本大震災の問題を考える際、何かしらの参考にしていただけるなら幸いである。

2011年6月21日 本田成親

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