幻夢庵随想録

《幻夢庵随想録》(第6回)(2019,02,15)

(煩悩の旅路を想いつつ)

 心を鎮めて瞑目し 「時」との対話を試みる
 過去の時間が立ち上がり 吾が足跡を嘲笑い 
ときに厳しく責め立てる
 消せないことをよいことに 老いの旅路を愚弄する

 さらばと対峙(たいじ)の向きを変え 未来の時間に問いかける
 これからも 愚かなこの身の足跡は 曲がりくねって続くのか?
 それとも間もなく絶えるのか?

 未来の時間はただじっと 無言のままに佇んで
 静かな笑みを湛えつつ 霧の荒野を示すのみ
 かくしてこの身はとぼとぼと また足跡を刻みゆく

 「人間本来無一物」 高僧かつて説くものの
 吾煩悩の携行者 息絶えてなお悟りなし
 腐臭を放つこの身をば 神も仏も持て余す

 生も死も 光の雫 昴(すばる)遠し

 星闇のもとでそう吟じ 吾が奥津(おくつ)城(き)と定めたる
昴の光追い求め 行き着き果てるその日まで 
愚魂の旅はなお尽きず 時空の旅はなお続く

カテゴリー 幻夢庵随想録. Bookmark the permalink.